1. 日本のサイエンスショップの現状と可能性以上の話は海外でのことですが、では日本でサイエンスショップはどうなっているのでしょうか。実をいえば、日本には、ごく一部のNPOを除けばほとんど存在していないのが現状です。 もちろん日本の大学でも、教員や学生が市民と協働して地域社会の問題に取り組む事例は、過去にもたくさんあります。しかしながらその大部分は、有志の教員や研究室、学生が個別に特定のテーマについて行うタイプのものであり、そうした個々の活動を、大学全体の機能として、組織的に促進するサイエンスショップのような仕組みはなかったのが実情です。 しかしながら最近は、大学の地域社会への貢献が重視されるようになるにつれて、大学と企業が共同する産学連携と並んで、とくに「まちづくり」や「環境」などの特定のテーマで、一つないし複数の学部・研究科が一体となって、地域の市民との協働を取り入れた組織的な社会貢献的な研究・教育のプロジェクトが増えてきています。 このような動きの中には、さらに、一部の学部・研究科や特定のテーマという枠を超えて、大学全体として、さまざまなテーマで地域社会や市民との連携ができるサイエンスショップ的な仕組みをもった大学も現れ始めています。 たとえば宮城大学地域連携センターは、地域からの研究・調査の委託や相談を受けつけ、学内の個々の研究者との仲介をはかる窓口の働きをしている点で、「サイエンスショップ」という名は使わずとも、事実上、サイエンスショップ的な組織になっているといえます。さらに熊本大学政策創造研究センターのように、「市民参加によるサイエンスショップ型研究」を銘打った事業をすでに始めているところもあります。帯広畜産大学地域共同研究センターでも、サイエンスショップを開く準備が進められています。 また大学外でも、NPO法人市民科学研究室やNPO法人サイエンス・コミュニケーションが、大学との連携も視野に入れつつ、サイエンスショップ開設の可能性を探っている。 さらに、サイエンスショップについては、文部科学省の『科学技術白書』でも平成12年度以来、繰り返し紹介されており、とくに『平成16年版 科学技術白書』では、「サイエンス・ショップ~市民社会の懸念に応える、市民参加型研究」というコラムで紹介されています。こうしたことから、今後は、日本の大学でも、サイエンスショップ的な組織や活動が増え、将来的には全国的なネットワークが作られることが期待されます。 5. そして大阪大学サイエンスショップ・・・このような日本でのサイエンスショップの展開に向けた流れの中で、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)が作る阪大サイエンスショップでは、地域社会と大学内の研究を結ぶことと並んで、もう一つ重要な目的を掲げています。それは、学部生や大学院生、博士課程を終えたポストドクター(ポスドク)の人たちに、サイエンスショップの研究や運営を積極的に担ってもらうことを通じて、サイエンスショップを教育・トレーニングの場として活用することです。これは、大学と社会を結ぶ「社学連携」とともに、全学の大学院生向け共通教育を行うことをミッション(使命)に掲げるCSCDからの「挑戦」です。 ここで経験を積んだ学生やポスドクのみなさんが、やがて、大学や企業、NPO/NGOで、専門家として、市民として活躍するとともに、将来のサイエンスショップの指導的な担い手として全国に広がってくれることが、阪大サイエンスショップの夢です。 参考文献・資料
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